食事から人生が見える?

「奥さんに経営戦略論をあてはめるという暴挙に出るなんて、あなたはきっと新婚ほやほやにちがいない」

この本は「予想どおりに不合理」の著者ダン・アリエリーが、自分の意思決定に関する人々の疑問に答えるため、ウォールストリート・ジャーナルのコラムに連載したものがベースになっています。彼の専門である行動経済学がベースではあるのでしょうけれども、自分の意思決定について、社会科学的な視点から考察したものとして(冒頭の一文のようなジョークを織り交ぜながらも)読みやすく書かれている本だと思いました。

これを読んで感心したことが二つありました。一つは「実験すること」の重要性。

 真の進歩ーと真の喜びーは、リスクを取って全く新しいやり方を試し、多様な経験を積むことによって得られるのだから。

これは、ティボール・シトフスキーという経済学者の言葉だそうですが、なんでも直感で決めるのではなく、まずは毛嫌いせずにやってみる。試してみる。失敗してもいいではないか。人生の進歩はそこから始まる。私もそうですが、新しい事はどうしても失敗を恐れて尻込みしてしまいがちなのですが、思考実験をふくめて、やはり「やってみなけりゃ始まらない」というところはあるなぁ、と思いました。

もう一つは「習慣を持つこと」の重要性。

 「この時間までに決める」というタイムリミットを設定し、いい案が思いつかなかった場合の「デフォルト」の活動を前もって決めておくんだ。

この「デフォルト」という考え方はとても重要に思いました。いろいろ考えて思いつかなくても、なにかやることをあらかじめ決めておく。何も考えずに「デフォルト」をやるのではない。逆に、思いつかなければ何もしないのでもない。タスク管理の重要性にも通じる物があるような気がします。単なる習慣づけではなく、このように考えれば「タスクに縛られる」というネガティブさを払拭できるかもしれません。

あとは、やはり個人的には家族や子供に関する質問は興味を持って読みました。

「どういう食事が好きなのか、考えてみろよ」(略)「毎日三食そこそこいいものを食べたいか、普段は粗食で節約してたまにとびきりいい食事をしたいのか」
「君が後者なら、いますぐ子供を作るんだな。子どものいる生活は、ふだんはそう楽しいもんじゃないが、たまにとんでもなく嬉しいことがある。でも前者なら、子供を持つのは考え直した方がいい」

これは家族に関する質問ではなく、食事に関する質問でのコメントなのですが、おもしろい例えだと思いました(ちなみに私は後者なので、ある意味安心しました)。

また、この本全体にも関係するのですが、著者はある一つの見解を押しつけるようなことをしません。必ず選択肢を与えて考えさせる。冒頭の経営戦略論のように、ある考えがAさんには当てはまるが、Bさんにあてはまるとは限らない。それは、著者はいろんな考えを持った人を想定しているからではないかと思います。「合理的な人」を否定するところから始まるのが行動経済学なのですから、ある意味当たり前なのですが、それでも人を大事にし、多様性を大事にするところが考え方の原点になっているような気がします。

photo by Ewan Munro from Wikimedia Commons

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