「失敗」から考える「意志力」(1) :スタンフォードの自分を変える教室

「失敗」しているのはあなただけではないのです。

スタンフォードの自分を変える教室
大和書房 (2013-04-26)
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前回紹介した『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』の中で3回ほどこの本への言及があったのを気になって、私の本棚にあったのを再読することにしました。日本では2012年に出版され、わずか2ヵ月で8刷されています。

タイトルだけ見るとなんだかよくある自己変革本に思えますが、原題が”The Willpower Instinct”とある通り、変えるのは自分というよりは「意志力」。多くの人が「意志力がない」と悩んでいるが、それはその人の能力不足なのではなく、ある意味あたりまえであること。そして、その誰しもが陥る「失敗」を「成功」に変えるための指針を、多くの実験をもとにした科学的分析をベースに解き明かしたものです。

そして、いくつかの「失敗」のパターンについてまず読者自身が「観察」するよう求め、その上で多くの実験をもとにした知見を、読者にも「実験」してみるよう、著者は問いかけます。単に「これをやってみよう!」ではなく、そのベースとなる事実なり現象を読者一人一人に実感してもらうというステップがその前に必ず入っているという点で独特の説得力を持っていると感じました。例えば

意志力のチャレンジに取り組みながら、それに関する決断をするとき「あとで取り返せばいい」という思いが頭をよぎることはありますか?「今日はダメでも明日挽回すれば大丈夫」と自分に言い聞かせることはありますか?

はい、もう図星です。学生のときもそう思ったし、今でもそう思うことがあります。で、まぁ、たいていうまくいかないわけです。それだけでなく、余計に楽観的な予測を立ててしまう。こんな「なんとなくありがち」なことを、実際に学問上の実験でもそうなっていることを紹介し、そのように「失敗」しているのはあなただけではない、と指摘します。

ここで筆者は発想の転換を求めます。今日できなかったことは、明日以降もできないんじゃないの?と。例えば10の目標を立てたとして、8しかできなかった。だったら、明日できるのは12ではなくて、やっぱり8だよね。ならば、毎日8しかできない、という前提で考えればいいんじゃないの?そして

ある行動を変えたい場合、その行動じたいを変えるのではなく日によってばらつきが出ないように注意するのです。
ラクリンによれば、タバコを吸うなら「毎日同じ本数」を吸うように喫煙者に指示すると、タバコの量を減らせを言われていないにもかかわらず、なぜか禁煙量が減っていくと言います。

なんらかの習慣を身につけるとき、まずは少しでもいいから必ず毎日やること、そうしないと身につけるのは難しい、といった主旨を複数の本で読んだことがあります。これはその主旨を裏から見て同じようなことを言っているように感じました。「毎日同じ行動をしよう」と言っていることは同じなのに、意志力の仕組みを巧みに利用?した説得力のある説明です。真正面から「こうしてみよう!」ではなく、「こうしたら失敗するよね?よくあることだよ。じゃあ、こうしてみたら?」という言い方です。

この言い方が誰にでも通用するわけではないとは思いますが、「人間失敗してあたりまえ」というところをベースにする考え方は、『やるおわ』と同じだなぁ、と思いました。

この項、続きます。

photo by jill111 in pixabay

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