完璧主義という名の「異状」からの脱出(2)

 前回の続きです。

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 先日、こういうことがありました。
 妻の体調不良が続いていたので、ある時妻は「いろいろなことを考えず、ある意味、生きていればOK、ぐらいの感覚で気楽にできないか?」と考え、自分自身への要求レベルを下げたのです。いや、下げたつもりでした。一方で、妻は子供への要求レベルを下げませんでした。宿題をちゃんとやるようにしつこく繰り返すのをやめなかったのです。

 親が子供に宿題をやらせる苦労は、誰でも経験することでしょう。しかし、ここは非常事態です。すでに極限に近い妻のストレスを増大させるわけにはいきません。私自ら担任の先生に相談して事情を話し、子供が宿題をやってなくてもあまり目くじらを立てないようお願いしました。本人がそこそこの成績を取っていることもあるのでしょう、先生は事情を理解して快諾してくれました。
 それでも妻はやめないのです。自分のせいで子供の教育に悪影響を与えたくない、と思っていたようです。わかるんだけど、それは、言行不一致ではないか?とある日私が指摘して、妻はハッとしました。手を抜くポイントが分かっていなかったのでしょう。

 たとえどんなに手を抜いても、それだけは犯してはいけないミス、というものがどんな仕事にもあるはずです。
 (略)
 手を抜いた結果、どんな悲惨になるかを考えることによって、いざとなれば仕方のない手抜きと、絶対にやってはならない手抜きとに分けて考えることができるのです。

 そこをクリアすればOK、という「最低ライン」の設定。私は子供が宿題をやらないことはとりあえず致命的ではない、と判断しました。実際先生も同意したのです。
 しかし、「最低ライン」の設定はとても難しいと思います。人や状況によっても違うし、何より自分自身で考えなければならないからです。「ゼロリスク」と言うのが一番簡単です。でも、「ゼロリスク」ができない時の対応策を考えるのはとても難しいのです。そんな難しいことを、頭の中がとっちらかっている人ができるわけがありません。

 完璧主義は、「ちゃんと考えてない」あるいは「ちゃんと考えられない」ために、自分自身に帰ってくるブーメランではないか。その上、このブーメランは自分自身どころか他人にも影響を及ぼしますから大変です。
 そうならないように、頭の中を解きほぐして、最低ラインや優先順位を設定してあげることが、「向き合う人」にとっては大切なことのように思います。自分だけでなく他人のことまでやるのはしんどいのですが、それが(消極的には)自衛につながるし、(積極的には)「異常」からの脱出の一助になるような気がします。

完璧主義という名の「異状」からの脱出(1)

 いやあ、こういう本を待っていました。特に今のような精神的につらい時期には、大変ありがたいです。

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 私はある意味この本の想定読者ではありません。言っちゃなんですが、仕事は「手抜き」してます。そうしないと残業なしで早めに帰宅なんてできないからです。

 一方、私は家事育児に関して完璧主義に縛られています。子供のため、家族のためにできる限りのことをしなければならない、と時々思い込んでしまうためです。できる限りのことを「してあげたい」ではありません。
 いろいろやっても、妻の体調や精神状態が一向によくならない。さらに、妻から怒られた時など、これまでの努力が全て無駄だったのか、と思うときがあります。なんとかならないのか?

 まず、この本を読んで救われた、と思ったのは、たしかに日本人には完璧主義者は多いし、いいこともあるけれど、完璧主義は「正常ではない」、とズバリ言い切ってくれたことです。

仕事のミスが少ないのも、よいことでしょう。
しかし、仕事のミスが全くない状態を目指すというのは、多分正常でいるための何かを失う結果になるだけです。
完璧というのは、普通に幸せに生きようという人が目指すべき目標ではないのです。

 有り得ないことを求めるのは正常ではないのだ、幸せではないのだ、と繰り返し述べています。繰り返し言わなければならないほど、そんな考えに染まってしまう人が(私を含め)多いからでしょう。で、そもそも、なんでそんな状態になってしまうのか?

人間は、完璧な存在などではないからです。
完璧主義と呼ばれるひとたちも、そのことは薄々わかっているはずです。どこかで手抜き、妥協を迫られていると。
ではどうしてそれができないかというと、実は「怖いから」なのです。完璧を追求し、そのために妥協せずにどこまでも頑張ったという事実を、自分の中で保っていないと、不安となのです。

 完璧主義は不安と結びついている。これがわかっただけでも収穫でした。
 日本人はそもそも「不安がる」人が多い。これは歴史的文化的背景もあるのでしょうが、とにかく何か異常なコトが起こってしまうと、些細なコトでも過剰反応してしまう。だから前に進めない。
 それに対する回答は、この本にもある通り、とにかくやる、少しでもやる、確信がなくてもやる、ということなのでしょう。結果はどうであれ、前進すること自体が大事なんだ、と。このブログも、そんなわずかな前進の足あとなのかもしれません。

 以上のようなことは、いろんな方がブログに断片的に書いてあるのを見かけるのですが、ここまでまとめて書いてあるのを見たのは初めてでした。やはり、本は本としての価値があるなあ、と思いました。

 この項、続きます。