チェックリスト 今そこにある安全網(5)

実はこのシリーズは4回で終わる予定だったのですが、前回記事の直前にこんな本が出てきました。正直に申し上げます。びくびくしながら読みました。

「目標」の研究

「目標」の研究

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計画やto doリストを一度でも作ったことがあるのなら、そして一度でも遂行に失敗したことがあるのなら、読んで損はない、と思いました。

目標や目的についての根源的な問いに対して、理詰めで迫ってきます。とらえ方は前回取り上げたロバート・ハリスと真逆と言ってもいいのですが、たどり着いたところは案外違ってないような気がします。なぜロバート・ハリスは「日付をつけない」夢をあえて100個も作ったのか、あらためてわかりました。

そして、チェックリストを運用するにあたって、最も大切な「安全網」は、見直すことだ、と筆者は指摘します。

目標設定をプロセスとして捉えると、驚くことに「終わり」がなくなってしまう。一つの目標は、常に改善され得る対象となるのだ。

実はロバート・ハリスの本には「100のリスト」が2つ出てきます。本文と、あとがき。さらに文庫版あとがきにはその後のフォローが記されています。彼も、見直すことをわすれなかったのです。

世の中には、一つの目標に向かって邁進することを異様に有り難がる風潮があるが、実際「愚直すぎる邁進」は目をつぶって全力疾走しているのと変わりない。

見直すことを怠ると、安全網どころか自らに刃を向けることになりかねない。しかもそれはわりとよく起こっているような気がします。だから、最初に作ることよりも、メインテナンスすることの方がはるかに大切です。

そして、もうひとつ。私がこの本で一番印象に残った一節です。

私たちがまっさきにやるべきことは、「今自分が生きている」ことを肯定することだ。それがどれだけちっぽけに見えても、実はその背後にたくさんの物事や、人と人とのつながりが支えてくれているのを知ることだ。それを土台にして大きな夢を見るならば、たとえその夢が破れても、人生に絶望することはないだろう。

これです。これがわかっていない人が多いのです。私を含めて。本能的に拒絶するのです。これが最も重要な「安全網」なのに。「生きてるだけで丸儲け」と明石家さんまが言っているのに、理解できない。

なぜ理解できないのか、正直申し上げて、よくわかりません。昨今の情報過多はあるかもしれない。ただ、情報過多でなくても、なかなかできない。人が本能的に備えている向上心がヘンな方向に向きやすいからかもしれません。

ただ、目標を立てるにあたって、夢を持つにあたって、すべての前提となるのは、この考え方にあるような気がします。この前提に立って作った夢のリストは、必ず自分にとっての「安全網」になるような気がします。

良いお年を。

チェックリスト 今そこにある安全網(4)

前回の続きです。
今回は全く別の角度から見たチェックリストです。

人生の100のリスト (講談社+α文庫)
ロバート・ハリス
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すごく簡単に言うと、自分の人生を見失わないために、「やりたいこと」を100個あげて、その全項目の「後日譚」を記した本です。前回までは項目を絞るのが難しいチェックリストですが、これは項目を出すのが難しいチェックリストです。ちょっとやってみればわかりますが、そう簡単に100も出せません。

著者はこれを大学に入る前(約50年前)に作ったあと、波乱万丈の人生を歩むことになります。すぐに願いがかなったものもあれば、2、30年経ってやっと実現したものもあれば、さすがに実現しないと考えて(あるいは興味がなくなって)入れ替えたもの、今後も実現可能性が極めて低いのに敢えて残しているものまであります。

そんなリストの「後日譚」を読んでいると、このリストは項目が多いことに意味があるような気がします。いつもは日常のこまごましたことに埋もれてやりたいことを考えるヒマすらないけど、何かにひっかかるアンテナ、できれば広めのアンテナを、普段は無意識でいいから心の中に持っておくことが、サバイバルに役立つと思うからです。

実際著者はこのリストを見ていなかった期間が何年もあり、何年かぶりに見返してみると、できた項目がいくつもあった、と言っています。夢を手帳に書いただけでは叶わないかもしれないけれど、やはり何かに書き記しておくと、人生がどこかで変わるかもしれない。そんな希望は、持っていていいと思います。

そしてもう一つ、著者が指摘するのが、リストを通して垣間見える自分自身の「可能性」。

頭でゴチャゴチャ考えるのではなく、イマジネーションを解き放って、自分の可能性を一つ一つ思い描いていく…このプロセスのおかげでぼくは何時間腰を据えて思考しても思いつかいような未来図を描き上げることができたし、自分が何に向いて何に向いていないのかを、はっきりと把握することができた。

これはとても大事です。これだけあげたリストに漏れた項目をやることは、やはり「自分ではない」方向に行っているかもしれない。もちろん直ちにやってはいけない、というわけではないけれど、それで苦しんでいるのなら「何かがおかしい」と感じさせる力が、このリストにはあるような気がします。それこそが「安全網」です。

著者はそうやって自分は「会社勤めは無理」と言い切るのですが、その反対に会社勤めしかやっていない私と重なる項目がありました。それは「コミュニティ」に関する項目です。

原宿に自分のサロンを作る
南の島で放浪者たちの集うバーを開く
ブックショップを開く
画廊を経営する

この4つの項目を著者はすべて達成しているのですが、私の「リスト」の中にも、これと似た項目があります。会社勤めの先にあるもの、あるいは会社勤めをやりながらできるもの…そういうことを妄想するひとときは、とても楽しいものです。